Glossary / 知っておくべき概念

延焼クラスターとは

1軒の火から街ごと消滅する、その境界線。

3行で分かる定義

  • 1.火災は、木造住宅が密集しているエリアでは隣の家へ次々に燃え移る。
  • 2.この「一度出火したら、幅の広い道路などで遮断されるまで、燃え広がる運命を共にする範囲」を延焼クラスターと呼ぶ。
  • 3.クラスターが大きい街区では「1軒の火=街区全体の消滅」となり、被害が桁違いになる。

1軒の出火 → クラスター全体へ

下のボタンで時間軸を切り替えてください。出火 → 延焼 → クラスター全体への波及が見えます。

出火
延焼範囲
別クラスター
延焼遮断帯

Why it matters

なぜこの概念が重要か

火災対策を語るとき、多くの人は「我が家が燃えるか、燃えないか」という個別建物の視点で考えがちです。しかし震災時の火災は、その視点では捉えきれません。

あなたの家が完全に耐火性能を備えていても、隣の家・隣の隣の家が燃え、道路で遮断されるまで延焼が続けば、最終的には熱・煙・火の粉で周囲の建物全てが被害を受けます。

火災は個別建物の問題ではなく、ブロック単位の運命共同体の問題なのです。

23 区での実例

世田谷区 vs 渋谷区の想定焼失棟数

世田谷区 0
渋谷区 0

差の正体は「建物密度」よりもクラスターサイズの差。約 67 倍 の被害差。

3 Factors + 1 Modifier

クラスターサイズを決める3つの基本要素

道幅・耐火性能・密度。この3つでクラスターの形が決まり、風速はそこに「飛び火」というショートカットを生みます。

1

道幅(延焼遮断帯)

幅員 6m 以上の道路は不燃領域率の算定上「空地」として扱われ、沿道が準耐火造以上であれば延焼を止める効果が高くなります。逆に幅 4m 未満の路地ばかりのエリアでは、クラスターが連続して巨大化します。

2

建物の耐火性能

耐火建築物(RC 造など)は壁を越えて火が移りにくい。木造が混在していると、1 軒からの延焼が次々に波及します。

3

建物密度(隣棟間隔)

隣家との距離が近いほど輻射熱で隣家が発火しやすい。軒先同士が触れるような密集地では延焼限界距離(バッファ)が連続的につながり、クラスターが切れ目なく続きます。

+

風速(飛び火という追加条件)

標準的な延焼クラスターの定義には風速は含まれませんが、強風下では火の粉が数十メートル~それ以上飛ぶ場合があります。本来なら道路で分断されるはずのクラスターが、風向き次第で「結合」してしまう現象です(能登半島・輪島市火災でも飛び火による延焼拡大が確認されています)。

自分の街のクラスターを調べる

シミュレータの「表示レイヤー」で 「延焼クラスタ」 を選ぶと、周辺エリアがクラスターごとに色分けされます。自分の家が属するクラスターの大きさを確認してみてください。

シミュレータで調べる

対策との関係

個人でできること

クラスターサイズを変えるのは難しいが、クラスター内で出火件数を減らすことは個人でできます。

  • 感震ブレーカーで通電火災を防ぐ
  • 家具固定で転倒・ガラス破損を防ぐ
  • 住宅用火災警報器の設置
街/行政レベル

クラスターサイズそのものを縮小する施策は、長期的・行政的に進みます。

  • 木密地域の不燃化促進事業
  • 延焼遮断帯(主要道路の拡幅)の整備
  • 建築時の準耐火基準強化

参考資料